サステナマッチ「気候アクショントークセッション」レポート

2026年5月10日、松本山雅FCは、ホームゲームで「サステナマッチ」を開催いたしました。
脱炭素、気候変動などをテーマに地域貢献活動に取り組まれている元ラグビー日本代表の五郎丸 歩さんをお迎えし、トークセッションを行いました。当日は、Jリーグ気候アクションアンバサダーを務める片山 真人クラブプロモーション担当と一緒にご来場いただいたファン・サポーターの皆さんと「スポーツと気候変動」「SPORT POSITIVE LEAGUES(スポーツポジティブリーグ)」についての理解を深めました。
片山「Jリーグでは、2026年からアジア初となるSPORT POSITIVE LEAGUES(通称SPL)に参画しました。
ここにお越しの皆さんで、SPLについて知っている方、手を挙げてもらえますでしょうか。
…誰もいませんね(汗)
SPLというのは、クラブの気候アクションを数値化して、その進捗や目指すべき方向性を分かりやすく把握できる仕組みです。
松本山雅では、今回のSPL参画に併せて、クラブの活動方針を「YAMAGA気候アクション」と再定義し、ミッション・ポリシーを新たに作りました。そして活動を推進していく上で重要と考える4つのプロセスの頭文字をとって「PASS」というキーワードを示し、これから皆さんと一緒に挑戦をしていきます。
まずは五郎丸さん、サンプロ アルウィンに初見参です。信州と所縁があるそうですね」

五郎丸「菅平高原がラグビー合宿のメッカなので。15歳からずっと毎年1回は必ず行っていました。今は息子がラグビーをしているので、息子の合宿にも保護者として毎年行っています」
片山「五郎丸さんが保護者でいらっしゃるなんて、すごい環境ですね。今日は、そんな信州には所縁がある五郎丸さんをお迎えしてトークセッションを行います。さっそく、本題に入りますが、五郎丸さんは脱炭素や気候変動などをテーマにした地域イベントを開催するなど、様々なアクションをされているそうですが、どのような取り組みで、なぜやってみようかなと思ったんですか」
スポーツ業界が気候変動に声をあげる理由
五郎丸「まずこのスポーツと気候変動ですが、多分結びついていないですよね。そもそもが。なんでスポーツ業界がこの気候変動に声をあげなくちゃいけないのかって。みんな、『・・・』ってなっていると思うんです。実はスポーツをする環境が今かなり変わってきています。温暖化でどんどん変わってきています。そして、いちばん影響を受けるのが子どもたちです。これなぜかと言うと、これから夏を迎えますが、プロ選手であれば時間を選べるんですよ。「じゃあ今日は夕方から練習しましょう」とか。でも子どもたちは空いた時間にやるので、昼間とかしか練習できないじゃないですか。夜やろうとすると、睡眠時間が短くなるとか、次の日が学校だとか、いろんな問題があるなかで、やっぱり昼間しかできないんですよね。そうなると夏に子どもたちがスポーツをできなくなる環境がこれからやってきます。さらにウィンタースポーツが1番打撃を受けています。長野では(冬季)オリンピックも開催されましたが、今、雪が降らなくなってきているので、競技ができないみたいなことが、どんどん進んできているんですね。そして、1番被害を受けているのが実はアスリート・スポーツ業界なので、気候変動問題に対して声を上げなくちゃいけない。そういうこともあってこう取り組みをスポーツ業界全体として動いています。

片山「日本は、世界に比べて気候アクションに対しての取り組みはちょっと遅れてますか?」
五郎丸「2024年に開催されたパリ五輪の視察に行かせていただきました。パリ五輪は、レベルが違うぐらい(気候アクションに)取り組んでいました。今日も地産地消ブースが出ていますが、これは脱炭素にいいんですよ。なぜかと言うと、例えば、バナナを食べますとなったら大体皆さんフィリピンから来ているって大体イメージつきませんか?フィリピンから空輸で運んでいるわけですから、僕らが食べるまでにはCO2が大量に出ているわけです。できないかもしれないですけれど、仮にこの信州でバナナを収穫できれば、そのCO2が削減されます。そういう意味で地産地消は、環境にとっても良いんです。今日のように地産地消でやるという方向性っていうのは素晴らしいんじゃないかなとは思っています」
片山「まさに今日出店している『ボクノポテト』。朝日村で山雅の選手OBの安東 輝さんが栽培したジャガイモを加工して販売している。あとは「スマイル山雅農業プロジェクト」。今日から緑大豆「あやみどり」を使ったコーヒーとお茶を新発売しています。他にもいろんな商品を地産地消で作っています。そういう活動にも注目していただきたいのと、ぜひ買ってください。しっかりそれを売ってまたそのお金で取り組むという循環を回したいので。ぜひ皆さんこれ終わったら、コーヒーとお茶も買っていただければと思います。それぐらい地産地消は大事ということなんですね」

五郎丸「大事ですね。やっぱりこのサポーターの人たちが、環境に対してアクションできる一歩かなと思います。最初の1歩ですかね」
気候変動がスポーツに及ぼしている影響
片山「皆さんの中でも、生ゴミが出たらコンポストに入れるとか。前回のトークセッションでもやられている方が多くいらっしゃいましたので、徐々に関心が高まってきていると認識しています。スポーツも気候変動の影響を受けているということですが、実際に日本や世界でどんな影響が出てきているのでしょうか」
五郎丸「まず1番分かりやすいところで行くと甲子園。今は、二部制になりました。朝早くやるのと夕方になりますよね。これもう我々小さい時じゃ考えられない。もう夏のあの炎天下の中でやるというのが、夏の甲子園の醍醐味でした。でも「ちょっと命が危ないよ」という、これは(競技を)やってる選手たちもそうですし、見てるお客さんたちもそうですよね。こういう気候変動の影響が、自分たちの身の回りで実は起きていることを皆さんに気づいていただきたいです」

片山「信州も、涼しい避暑地だったはずですが、ここ数年で気温が上がってきています。先ほどもお話がありましたが、雪が降らないとか、避暑地のはずが35℃を超えるとか。それでは僕たちはどういうアクションをしていけばいいでしょうか」
五郎丸「今日も山雅さんがいろんな企画をやられていますが、大体こういったイベントをやった時に1番CO2が出るのは、実は皆さんの交通手段なんです。車とか。これはクラブ側がどれだけ取り組んでも、皆さんの行動、アクセス方法を変えていただかないとCO2とか脱酸素っていうのはそもそもできませんよっていうことを理解いただきたい」
片山「じゃあ会場の皆さんに聞いてみたいと思います。今日歩いてきた人。めっちゃ少ないですね。次に自転車。これは結構広がってきているんですよね。やっぱり車という方。大半の方が車ですね。スタジアムの立地上、致し方ないのですが。今日は、松本駅からのシャトルバスをバイオ燃料やEVバスも運行しています。このような取り組みも続けていければいいと思っているんですが、まずは移動手段ですね。駅からスタジアムが遠かったり、公共交通機関がなかったりっていうこともあります」
五郎丸「難しいのは難しいですよね。ただ大事なことは、自分の意識を変えるということです。例えば、「もう車を使わない」となると結構苦しいじゃないですか。そこは変えられないけれど、プラスアルファで、未来の子どもたちのためにとか、応援している選手がずっと選手を続けられるように、サポーターとして何かアクションを1つ起こす。こういった自分事にしていくことがすごく大事です」
片山「自分事として、皆さんが気づいたことでいいですよね。先ほど言ってもらった交通の便もそうですし、マイボトルを使うとか、できることからやっていくっていうのが大事ですね」
SPLとは
五郎丸「その何か1つやったからと言って、世界が今すぐ変わるってことはほぼないんですよ。でも今日話を聞いていただいた方が、「じゃあ明日から何かアクションしてみよう」って、まずは思っていただくのが一歩目。第一歩かなと。SPLだって皆さんまだ分からないんですし、これからだと思います。
SPLは、元々イングランド・プレミアリーグからスタートしているんです。これが何かと言いますと、この脱炭素だとか環境系のアクションを全部ポイント化しています。JリーグでもJ1からJ3までの全クラブが取り組んでいて、順位付けしていくんですね。今は百年構想リーグなので、J2とJ3の対戦がありますが、J1クラブを倒すことができないじゃないですか。でも気候変動を皆さんが取り組んでいただけると山雅がポイントを稼いで、J1を破ることができるんです。(SPLでは)Jリーグで1位になれる可能性があるんです。そうすると面白いじゃないですか。しかも1番大事なのはクラブだけで頑張っていても仕方がなくて、クラブを中心として、いかに人を巻き込めるかっていうのが、SPLのこの大きな枠組なんです。今日話聞いていただいてる方は、ぜひこの山雅を応援する気持ちでアクションしてもらえると2度おいしいと思います」

片山「僕たちは、昨年のサステナカップで3位になったじゃないですか。皆さんは、勝負に勝つこと、ポイントを取ること好きなはずです。今回はSPLです。多分はじめて聞いた方ばかりだと思うので、このトークをきっかけに理解をしてもらって、最初の一歩を踏み出していただく。僕もちゃんと勉強していかないといけません。そして、ポイント制なので、やればやるほど目に見えてポイントが加算され、J1クラブだって倒せますよ。鹿島アントラーズやヴィッセル神戸とか。このSPLだと。
五郎丸さんからスポーツポジティブリーグについて、サッカークラブの気候アクションを数値化しているということを説明してもらいましたが、クラブが皆さんを巻き込むためにどんなことが求められていて、どのようなアクションに期待していますか」
Jリーグが一番求められていることは、
いかに人を巻き込んでいくか
五郎丸「具体的には、やはり地域地域の色っていうものがあると思うので、 そこに沿う形でやっていくのがいいと思います。何かこれをやった方がいいよっていうことは実はなくて。この信州のこの空気を知っている人たちが、この人たちを巻き込むためにはこういう風なアクションした方がいいよねっていうことが1番いいかなと思います。あと選手たちもサポーターと一緒にみんなでやっていくっていうのが、やっぱりJリーグの魅力かなと。日本財団からも支援を受けてやっていきますが、1番求められていることは、やはりプロスポーツクラブ、今回で行くと松本山雅さんがハブになって、いかに人を巻き込んでこのアクションしていくかということです。ぜひ皆さん、一緒にアクションしてもらえるといいと思います」

片山「今日ここに100名以上の方がいらっしゃいます。それぞれが1人ずつ巻き込めば、200人ですよね。5人巻き込むって考えると…我々は絶対に可能性を秘めている、そういうクラブだし、これまでもそういう風にやってきたじゃないですか。ぜひ今回もこのトークセッションを機会に自分のできること1つアクションをやってほしいですよね」
五郎丸「学校教育でも、我々の時代にはなかったのですが、今の子どもたちは環境の勉強をするんです。でも地方に行けば行くほど、そのアウトプットする場所がないんです。なので、そういった子どもたちと一緒に、子どもたちのアウトプットを山雅さんが提供するとか、サポーターの皆さんで作っていくみたいな座組みは、地方都市に行けば行くほど、合っているんじゃないかなと思います」
片山「五郎丸さん自身は、どんなアクションをされているんですか」
五郎丸「全くラグビーとは関係ないのですが、昨年、音楽フェスをやりました。なぜやったかというと、ラグビーを見ていただきたいというのはもちろんあるんですが、ラグビーに興味がない人たちも大半いるわけですよ。Jリーグみたいに人気があるといろんな世代の人が見てくれますけど。静岡県磐田市で開催したんですが、何か街を象徴するようなイベントを創って、子どもたちが活躍する場所を1つ創ってあげたいなっていうのがあって、やりました。その時に、気候変動も並行してやりまして、アクセス面とか、CO2の数値化とか全てやらせていただきました」

片山「我々も、脱炭素や脱プラスチックなどにもやっているんですが。その2つも含めて1番取り組みやすいことからでいいのかなと思いますが」
五郎丸「ゴミの分別とか1番分かりやすいですよね。ただそれがイコール気候変動アクションになっているというイメージが湧かないですよね。分別するだけでは」
片山「ただ分別しないよりはやった方がいいし。まずは気候アクションに繋がってるかな?とかではなくて、まずそういうのを習慣化して、結果的に繋がってるっていうことで全然いいと思います。松本山雅もいろんな活動させてもらっています。皆さんにも協力していただいているものを続けていくことが大事ですよね」
五郎丸「クラブにはパートナーもいらっしゃいますので、そういった方々とタッグを組んで、自分1人じゃできないことを、実現してくれる。そういう魅力がクラブにあると思います。ゴミを分別してただ燃やすのではなく、スポンサー企業さんと一緒にリサイクルに取り組んだりとか。そういうことがやっぱりスポーツチームの大きな強みではあると思います。すでに山雅さんでもやられていると伺いました」
片山「リサイクルという点では、僕が履いているシューズもアディダスが海洋保護団体とコラボして、ビーチや沿岸で収集したプラスチック廃棄物をアップサイクルした素材が使われています。こういうことからはじめるとか。今はSNSで調べればいろんな情報がすぐに出てくる。その中で自分ができること、合っているなって思ったものをまずやってみることでいいのかなと思います」

五郎丸「あとは、やっぱり皆さん山雅が大好きだと思いますので、松本山雅FC がこれからもずっと続いていくための1つのアクションとして、なんか自分事にしてもらえると1番いいのかなと思います」
片山「それですね、 山雅の未来のために、サッカー界の未来のためにまず1つ。今日は藤枝さんもいらっしゃっているから、藤枝MYFCの未来のためにも。藤枝(の槙野監督)は「マテ茶」ですけど、こっちは「豆茶」です(笑)。その対決もありますから、ぜひ買ってください。マテ茶じゃなくて豆茶を。よろしくお願いしたいと思います」
質問コーナー
ラグビーが大好きです。山雅の試合には自転車で来ていますが、ラグビーを国立競技場などに見に行く時は、車で行っています。車のほうが便利だから。それでも許してもらえますか?

五郎丸「別に僕は審査員でも何でもないので。全然大丈夫ですよ(笑)」
片山「そういう課題もありますよね。信州から東京まで行く時にはやっぱり車になってしまう」
五郎丸「どうしていくべきか?仲間と乗り合わせで行く、そういう工夫が大事だと思います」
片山「何人かで行くのであれば、乗り合わせていとか、車の種類を電気自動車とかに変えるとか。でも全部が全部こうしきゃいけないっていうわけじゃないから。ここまでは車で行って、その先は電車にするとか、そういうことでいいと思います」
五郎丸「あとはマイボトル持って行こうとかですね。工夫が必要かなと思います。全部を変える必要はないと思います」
気候変動と直接関係あるか分かりませんが、現役時代に多くの指導者の方から指導を受けたと思いますが、印象に残っている言葉はありますか?
五郎丸「ありがとうございます。気候アクション全く関係ないですね(笑)。大学の監督に言われた「失敗は誰でもするんだ。それは気にしなくていいと。でも1度同じような失敗をするな」って言われたのがすごい印象に残っています。自分の中では、チャレンジしていいんだなっていう感覚になりました。
片山「気候アクションに繋がっていますね。1度同じ失敗しちゃいけない。今無理やり気候アクションに繋げました。そういう意味では藤枝さんいらっしゃるから。僕らアウェイで負けました。1回目は失敗しました。2回目は失敗しちゃいけないです。 今日は勝ちましょう」
五郎丸「何対何だったんですか?」
片山「2-0で負けたんですよ。(元山雅の)菊井選手に2点取られて。五郎丸さんは、そういう言葉があの印象に残ってチャレンジしようという気持ちになったんですね」
五郎丸「なんか失敗しちゃダメだっていうのが、自分のマインドにありました。でも大学の監督は『もう失敗していいからとりあえずチャレンジしろ。ただ同じミスは2回繰り返すな』。これでチャレンジしていいんだなっていう前向きになりました」
片山「だから気候アクションもそうですね。やろうと思って失敗しちゃってもいいから、まずはチャレンジ。一歩を踏み出そう。そういうことですね。ぜひ皆さんもチャレンジをしていただければと思います。ちょっと関係ない質問でも無理矢理に気候アクションに繋げるので大丈夫です(笑)」
磐田まで藤枝から42km走ってラグビーを見に行ってました。今日はさすがに200kmあるので車で、地球に優しくない感じで来ました。こういうイベントで電気を使いますが、スポーツ界で使っている電気をどうやっていくのがいいかなっていうの五郎丸さんから提案があれば教えてください。

五郎丸「いろんな方法があります。バイオ燃料に変えたりとかもそうですし、太陽光のソーラーパネルを設置するとかもいいと思います。パリ五輪で面白いと思ったのは、オリンピックなので、選手や観客が世界各国から飛行機で訪れます。これを全て変えることは不可能なので、前もってカーボンオフセットの植林を取り入れたりしていました。大会期間中に排出されるCO2は事前に把握できるので、ここを消しに2年前から取り組んでいたんです。そういった発想に僕は結構驚きました。やっぱり出たものに対してその場で消していくっていう皆さんイメージだと思うのですが、それをもう出るのは分かっているので、事前に消すことをやられてるのを見て、こういう取り組みはあるんだなと思いました」
片山「世界ではいろんな取り組みがありますね。僕からも1ついいですか?ずっと前から言ってるんですけど、ゴール裏のサポーターの皆さんが飛び跳ねるじゃないですか。皆さんの下にパットを敷いて、振動で発電したらいいんですよ」
五郎丸「めちゃくちゃ(発電)できそうですね」
片山「僕は思っているけれど、実現ができるかどうか。ヨーロッパのクラブでやっているところが確かあったんですよ」
五郎丸「マラソン大会とかでもやっていますね。ゴール地点とかスタート地点に設置されてるんですよ。必ず踏んでいくので。それもいいですよね」
片山「山雅だけじゃなくて、スタジアムのゴール裏で飛び跳ねる人は多いですから。そういうエネルギーをうまく使えないかなとは思っています」


Profile
五郎丸 歩 Ayumu GOROMARU
福岡県出身。元ラグビーの日本代表選手。早稲田大学時代に日本代表デビュー。ラグビートップリーグのヤマハ発動機ジュビロやフランスRCトゥーロンでプレー。2015年ラグビーW杯ではワントライを含む58得点を記録。2021年の現役引退後は、プロラグビークラブ「静岡ブルーレヴズ」の運営担当を務める。現在は地域イベントの開催、脱炭素、気候変動などテーマに地域貢献活動をはじめ、様々な分野での活動に広げている。日本財団HIROsアンバサダーとして、地域貢献活動や環境保全活動などを幅広く実践されている。